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原発事故における放射線の警戒値と危険値(元ネタ:セキュリティホールmemoさん)

福島第1原発について日々報道がなされていますが、一般市民にとって
どうなったら危ないのかサッパリ分かりません。
科学的根拠に基づいた、何らかの指標はないものかと探していて見つけました。


2009年に論文発表されたアメリカの科学者 Robert L. Brent 氏(Thomas Jefferson大学医学博士/小児科・放射線病理専門)の
データなどから行動指針を概算したと書かれています。


途中の切り出しは誤解を招くし、転載可と書かれていますので下記にソースコードからそのまま転載します。
記事訂正もあるかもしれませんので、最新データは上記リンクから飛んでください。


また、別のサイトに「福島原発放射能を理解する カリフォルニア大学のモンリオール(B. Monreal)氏による講演のスライド 」が
今回の事象について分かりやすく解説されている日本語翻訳があります。


福島原発放射能を理解する
http://ribf.riken.jp/~koji/jishin/zhen_zai.html


非常に有用なので、合わせて一読した方がいいでしょう。
東京都健康安全研究センターが今回の原発問題で「環境放射線測定(東京都新宿区百人町)」を開始している。
1時間ごとに測定結果が公開されているので、都内の方はこれを見ればいいだろう。


環境放射線量測定結果(最新データ)(測定場所:東京都新宿区百人町)
http://ftp.jaist.ac.jp/pub/emergency/monitoring.tokyo-eiken.go.jp/report/report_table.do.html


原発事故における放射線の警戒値と危険値(山内正敏@キルナ/スウェーデンさん)
http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html



放射能漏れに対する個人対策

=-=-= 転載自由(source code をそのままコピーして下さい) =-=-=



放射能に関して、放射線医学総合研究所(事故対策本部に加わった組織)を始めとして、多くのメディアや研究者が

『現在の放射能の値は安全なレベルである』

という談話を発表していますが、残念ながら、どの組織も

『どこまで放射線レベルが上がったら行動を起こすべきか(赤信号と黄信号)』

を発表していません。これでは近隣地域の人々の不安を払拭する事は出来ないと思います。行動を必要とする危険値や警戒値を語らずに『安全です』と言ってそれは情報とは全く言えないからです。これは我々が取り扱っている宇宙飛翔体での管理についても言える事です(その為に宇宙天気予報があります)。

 そこで、少々荒っぽいですが、放射能と風向きの観測値に基づく行動指針を概算してみました。科学的に厳密な予測は気象シミュレーションや拡散条件など多分野に渡る計算を必要として、短い時間にはとても出来ないので、多少の間違いもあるかも知れませんが、緊急時ですので概算をここに公表します(3月22日現在)。



先ず第一に、刻々と変化する放射能に対してどう判断するかです。色々な研究所が上限値を出していますが、これが総量である事が問題です。というのも測定値は1時間当たりの値だからです。とりあえず、総量100ミリSv(Svはシーベルト)という数字で考えてみます。この数字は原子力関係者が緊急時に受けて良いとされる政府基準・東電基準で(政府は今回に限り250ミリSvに引き上げた。ちなみに国際基準原子力従事者で500〜1000ミリSvで、一般人で20〜100ミリSvです)、更に妊婦を除く大人が受けても概ね大丈夫と科学的に示されている値でもあります(R.L. Brent の2009年のレビュー論文を参照)

 居住地付近での悪化に気がついてから脱出まで半日かかるとして、かつ状況が刻々と悪くなる事を考慮すれば、危険値は100時間で割るのが妥当ですから、

(1) 居住地近くで1000マイクロSv/時(=1ミリSv/時)に達したら、緊急脱出しなければならない = 赤信号。

という事になります。しかしながら、この値になって行動すると云う事はパニックを意味します。現在の値の変動幅を見るに、一桁の余裕を見れば数日の余裕があると考えられます。逆に言えば、1割以下の量を超えた段階で行動を開始するのが妥当で、

(2) 居住地近くで100マイクロSv/時(=0.1ミリSv/時)に達したら、脱出の準備を始めた方が良い = 黄信号。

という事になります。



第2に、妊婦に関する特別な考慮です。事故対策本部の放射線医学総合研究所に100ミリSv(総量)で大丈夫とありますが、これは正確ではありません。上にあげた R.L. Brent のレビュー論文(2009年)によると、100ミリSv(総量)というのは、1%以上の人が影響を受ける値です。つまり、安全値というより、むしろ、これを越えると有為な差があるという危険値です。では大人に比べてどのくらい考慮しなければならないか? 論文の Figure 4 を見ると、妊娠初期で危険値が低くなっていて、妊娠後期に比べて3割程度の放射線で赤ちゃんに同じ障害が出ています。(ちなみに、妊娠後期以降は大人に至るまで大差はないという事のようです)。という事は、大人の場合の3割(30ミリSv)を目安にするのが妥当で、

(3) 妊娠初期(妊娠かどうか分からない人を含めて)の場合、居住地近くで300マイクロSv/時(=0.3ミリSv/時)に達したら、緊急脱出しなければならない = 赤信号。

(4) 妊娠初期(妊娠かどうか分からない人を含めて)の場合、居住地近くで30マイクロSv/時(=0.03ミリSv/時)に達したら、脱出の準備を始めた方が良い = 黄信号。


となります。

逆に言えば、(2)や(4)の1割以下(居住地近くでの値が、普通の人で10マイクロSv/時、妊娠初期の人で3マイクロSv/時)なら安心して良い事になります。ちなみに、放射能の影響は、細胞分裂の活発な若い人ほど深刻だと思われている(注:未確認ですので情報を持っている人はお教え下さい)ので、乳幼児や子供は妊婦と大人の中間になります(上記論文の表4参照)。



第3に、距離との関係です。チェルノブイリで問題になったのは事故現場からの直接放射でなく、そこで発生した高濃度の放射性噴煙が移動しながら出す放射線でした。福島原発も、レベルは違うものの放射性ダストを外に出しています。というのも、燃料棒が壊れて、しかも開放弁を通して外気に直接触れているからです。水を被っていない燃料棒は、表面から放射性ダストを出し続けます。その速さは一定でなく、焚き火での焼けぼっくいと同じように、小さな崩壊(爆発)を繰り返して、それが放射能の濃淡を作ります。開放弁から出て行く時も同じで、発電所から出て行く時も同じです(最悪の場合は爆発という形ですが、今はそれは考えていません)。更に一旦ダストが風に乗ると、その濃淡は距離と共に強くなるのが普通です。この手のマイクロスケールの濃淡(いま問題になっているのは高濃度部分です)は自然界では普通に起きている事です。この高濃度ダストが風に運ばれる事のリスク計算がありません。


 地表と違って上空100mを越えると風は安定的にかなりの速さで吹く事が多くあります(山などで風を感じないのは、どんなに標高が高くてもそこが地表だからです)。その場合、地表から数百メートル以上の高さ(ダストが届き得る高さ)では10m/秒(時速約40km)という見積もりが良く(10km上空は最大50〜100m/秒です)、この速度だと、高濃度の放射性ダストは(サイズにもよりけりだけど)数時間は拡散せずに放射能を出し続けます。一部の人が言っているように距離の逆自乗・逆三乗で減る事はありません(真空の場合とは全く違います)。たとえば煙突から出る煙を見て頂ければ分かりますが、風の弱い日(煙突の高さで5m/秒以下)だと、ソーセージ状の煙のくびれが距離と共にハッキリして、その為、高濃度の部分が距離の割にあまり拡散しない事が見て取れると思います。


 このような高濃度ダストは原発現場でも高濃度の放射能を出しますから、現場で非常に高い値を記録したら、その風下の人間は緊急に室内に退避しなければなりません。その警報が届くまでに2時間見積もる必要があり、そこから80km圏という数字が簡単に出て来ます。ちなみに、こういう警報は日本語で出されますから、日本人(現状では1時間以内で対応すると思われる)と外国人とでは避難の速さが違い、その為に日米での退避半径が違うと考えられます(もちろん、避難範囲を広げると国が後日保証しなければならない人が多くなる、という事情もあるかも知れませんが、そういう政治的・裁判手管的考察はここではしません)。


 ここで風向きをどう知るかが問題になります。要領は花粉予想や煤煙予想と同じなので、気象庁で出来るはずですが、残念ながらそこまで至っていません。ですが、海外の研究所がこの予報を出しています。日本全体のシミュレーションは
ノルーウェー気象研究所http://transport.nilu.no/products/fukushima
が出していて、例えば地表のどこにダストが届くかはこれです。上述したようにかなり長い距離をダストが塊の形を保ったまま流れているのが分かると思います。この予報はノルーウェー気象研究所http://www.yr.no/)の風向き予報(例えば東京だとこれ)に基づいています。

 もちろん、予報と実際の値は得てして違います。ですから、実際の地上での風向き(アメダスなどの観測値)も見る必要があります。この場合、地表から上空1km程度まで、風向きがゆっくりと時計回りに変わる事(エクマン螺旋といいます)を考慮して、誤差を最大120度と見積もると、地表風向きに対して(上から見て)時計回りに90度、反時計回りに30度の範囲が風下に当たります。


 さて、では福島原発での放射能の値がどれだけ上がったら室内退避をすべきでしょうか? 急速に運ばれた放射性ダストが、例えば朝凪夕凪になって居住圏にジグザグしながら浮遊するとして、2時間を想定すれば50ミリSv/時が危険値です。つまり

(5) もしも原発の近くで50ミリSv/時を越えたら風下100km以内(時計回り90度、反時計回り30度の扇形)の人は緊急に屋内に退避し、100km以上でも近くの放射能値情報に随時注意する = 赤信号。

ちなみに無理やり居住地から脱出する必要は余りありません。想定外の爆発でなければ、様子を見て(1)〜(4) に従って判断すれば良いと思います。

 では警戒値はどの程度になるでしょうか? この場合、原発での測定が一ヶ所であることを考慮しなければなりません。局所的な高放射能雲なので、一桁の誤差を見積もる必要があります。従って、緊急避難値の1割の5ミリSv/時という事になりますが、この位の値になると、原発正門(測定値のある所)では、事故現場からの直接放射の量が大きくて、浮遊性ダスト起源と区別がつきません。こういう時は変動幅を使うのが常套です。つまり

(6) もしも原発の場所で急に5ミリSv/時以上の変動が見られたら、風下100km以内(時計回り90度、反時計回り30度の扇形)の人はなるべく屋内に退避し、100km以上でも近くの放射能値に随時注意する = 黄信号。

となります。補則として、スモッグの時の対策と同じく


(7) 居住地で黄信号の場合、朝凪や夕凪(あるいは霧の発生し易い天気下)は外出を控える = 赤信号。

というのも加えておきます。どんなに急速にダストが溜まるか分からないからです。



 最期に、気象庁原子力保安院への提言です。原発サイトの回りでの放射性ダストの分布を推定する為に

(a) 原発を取り巻くような形で500m程度離れた地点での放射能モニターを至急設置して欲しい。

(b) ダストと風の垂直分布(ダストが何処まで高く昇るのかが決定的に重要です)を推測する為に、気象ゾンデに放射能モニターを積んで、毎日数回、原発サイトの近くで打ちあげて欲しい。

(c) 原発地点の近くの高い所で、常時発煙筒を焚いて欲しい。この煙の行き先から放射性ダストの向かう方角がある程度わかる

これらの情報があるだけで、放射性ダストの行き先の予測が非常に楽になります。




written 2011-3-18

revised 3-19:(1)と(2)を追加

revised 3-21:(5)、(6)、(a)、(b)を追加、放射性ダストの流れの予報サイトを追加、(1)〜(4)に『居住地近くで』を追加、安全基準値に関するミスを修正。

revised 3-22:第2項の説明を簡素化、第3項の説明を修正、(7)と(c)を追加、放射能値リンク追加、ICRP(国際放射能安全委員会)リンク追加。

山内正敏

スウェーデン国立スペース物理研究所(IRF)

(日本の研究者が研究室と学会(被災地の研究室)の復旧で手一杯のようですので、海外の私が敢えて発信する事にしました。修正に当たっては多くの方のコメントに感謝します)

追記(22日夕方):電源復活に伴って燃料棒が全て水に埋もれる見込みが出てきて少しホッとしています。燃料棒が水没してくれたら、ダストの量が大きく減るはず(確証はないけれど)だからです。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

単位について(Gy と Sv)



Sv = Q x Gy



で大抵は Q=1 です。但し、ソースの近く(原子炉の近くとか、放射性ダストの近く)では中性子の事があり、その場合はQ=10程度(エネルギーによって数値が少し違う)です。